金融市場と複雑系

金融工学の分野ではランダムウォークがその中核を占め、完備な市場が前提条件となっている。ただし、このような立場から作られたモデルが必ずしも実践で役に立つとは限らない。また、金融工学を忘れ、より相場をアートと考えテクニカル分析を多用することも考えられる。しかし、テクニカル派に十分すぎるほどに身を投じたとしてもそれで市場に勝てるわけではない。過去を振り返り、それをあらゆる角度から分析したとしても、過度に過去のデータに浸透した手法、概念、モデルでは金融市場でリスク管理なり、ポジションテークする場合にどうしても足らない部分が出てくるのである。では、どうしてこのような状況に陥るのであろうか?そのひとつの答えは「市場は常に進化する」というものである。市場の参加者も、制度も、金融商品も、そして概念も常に進化し多様化しているのである。この複雑な市場で活動するには、そして生き延びるには今までに無い概念が必要であり、その必要なものはもしかたら複雑系の研究から得られるのではないだろうか?