本書の著者D.F.デローザ氏はシカゴ大学においてファイナンスと経済学の分野で博士号を取得した後、投資実務の世界に入っている。現在、DeRosa Research and Trading社の社長であり、かつエール大学マネージメントスクールの非常勤教授でもある。この他の著作としてCurrency DerivativeとManaging Foreign Exchange Riskがある。後者は「外国為替のリスク・マネージメント」(有斐閣、1993)として日本語訳が出版されている。

「外国為替のオプション」は為替市場の基礎知識、通貨オプションの取引方法から出発し、ヨーロピアン通貨オプションの理論とその分析方法をまず解説している。著者はアライアンス・キャピタル・マネージメント、BEAアソシエーツ、スイス銀行ニューヨークの外国為替取引部門に所属していたこともあり、いたるところに外国為替の実務家としての経験が現れ、投機家、ヘッジャ−、根付業者にとって有益な議論が展開されている。市場の方向性にかけた取引戦略と通貨オプションを利用したヘッジ戦略について詳しく説明し、その後話は価格変動性とその特性、そしてボラティリティ−を利用した取引手法へと移っていく。アメリカンオプションと通貨先物オプションに関してかなり丁寧な解説が行われた後、議論は最近日本でも多くの投資信託などで用いられているバリアー通貨オプションへと展開していく。閾値(バリアー)を持つエキゾチックオプションについて細かな分析がなされている。最後に閾値(バリアー)を持たないエキゾチックオプションの中でも市場で人気の高いアベレージオプション、コンパウンドオプション、バスケットオプション、クオントオプションについて説明している。

本書は難解な数式を飛ばして読んでも外国為替オプションの理解を向上できるように書かれている。時間的な制約の厳しい実務家にとって短時間で外国為替市場の本質がつかめる書物は貴重である。最先端の外国為替オプションの理論を理解したいが学術論文を読むほどの時間のない人たちにも大変適している。また、投機家、ヘッジャ−にとって、トレーディングやヘッジを行うのは大変難しいとされている為替市場において、本書で解説されている効率的に資金を動かす技術は不可欠なものである。そのような技術に磨きをかけたいと思っている人たちにも本書は有効である。

本書の翻訳は、主にいわゆるオルタナティブインベストメント(マネッジドフューチャーズファンド、プライベートエクイティーファンド、ヘッジファンド等)を中心とする運用サ−ビスを年金等の機関投資家に提供している住商キャピタルマネジメント社の森谷・及川により行われた。また、一部下訳を同社高橋敏行が担当した。本書の翻訳の過程で、多数の人々からご教示あるいはご激励をいただいた。本書の翻訳にすばらしいところがあるとすれば、それはかれらの尽力によるものである。心からお礼を申し上げたい。そして出版の労をおとりいただいた東洋経済新報社出版局渡部昭彦氏に心からお礼を申し上げる。

著者との密接なやり取りにより翻訳には最善を尽くしたつもりであるが、至らぬところは訳者の責任である。

未来の技術革新のために、そして明日の食料を生産するために世界のいたるところで資金が必要とされている。大きなリスクを伴う投資が特に開発途上の国々で必要とされている。本書が読者の方々の投資判断に少しでもお役に立つことを願うと同時に、そのようなところに僅かな資金でも流れていくことを心から願ってやまない。

2000年11月  森谷博之

及川茂



訳者

森谷博之(もりやひろゆき)

1980年上智大学理工学部卒。外資系金融機関、アフリカ開発銀行にて国際金融、リスク関連業務に従事した後、現在オックスフォードファイナンシャルエデュケーション取締役社長、住商キャピタルマネジメント上級顧問。

英国ストラッスクライド大学MBA

英国エディンバラビジネススクールMBA

英国ロンドン大学CIEE金融経済学修士

訳書:「シュワッガーのテクニカル分析」パンローリング

及川茂(おいかわしげる)

1082年東京大学法学部卒。同年住友商事入社。為替・貴金属等のマーケット関連業務、資金運用、投資関係業務全般に従事した後、現在住商キャピタルマネジメント代表取締役。

日本証券アナリスト協会検定会員。