金融時系列データのフラクタル分析
金融時系列データのフラクタル分析

熊谷喜彰 著

A5判 上製 264頁
本体 3,500円
ISBN4-8115-6311-5 C1033


 金融時系列データは他の経済データと同様に時間軸上に不等間隔に存在するデータである。価格時系列は日次であれば休日の扱いによって異なるデータとなることは曜日効果として研究されてきた。さらに、日中効果などの議論からわかるように取引時間中も価格過程の進展速度は一様ではない。また、高頻度データを用いる場合には、個々の取引の発生する時間間隔は等しくない。このように、価格時系列は本質的に離散的で不等間隔なデータであり、さらに不等間隔にサンプリングされている。
 本書はこれらの問題に対応するため、粗視化した極地を用いた新しい価格時系列の分析手法を提案する。これは、フラクタル分析の一種であり、テクニカル分析において価格時系列を観察するときに用いられてきた考え方でもある。本書の手法は、価格時系列において価格を進展させる時間とは何かを考える場合、あるいは、時間軸上で不等間隔に発生する価格データそのものを高頻度データとして分析する場合に役立つと思われる。(「序」より)


[ 目 次 ]
第1章 価格時系列データの性質
  1.1 価格の生成 1.2 価格時系列の時間軸 1.3 価格時系列の価格軸
第2章 価格変動の分布
  2.1 分布の記述 2.2 価格変動の分布に求められる性質 2.3 安定分布
  2.4 価格変動の分布 2.5 混合正規分布
第3章 時間的従属性
  3.1 自己相関 3.2 スペクトル分析 3.3 ウェーブレット
第4章 フラクタル
  4.1 フラクタル次元 4.2 時系列グラフのフラクタル 4.3 フラクタルARIMA過程
第5章 テクニカル分析における時間
  5.1 時系列罫線 5.2 非時系列チャート 5.3 エリオットの波動理論
第6章 変動の粗視化
  6.1 粗視化した極地 6.2 変動の入れ子構造 6.3 折畳次元 6.4 テクニカル分析と粗視化
  6.5 価格軸の離散性モデルと粗視化 6.6 極地の時間間隔 6.7 ティックデータへの適用例

[ 著 者 ]

熊谷喜彰(くまがい よしあき)

1968年 生まれ
1991年 慶應義塾大学理工学部卒業
1993年 慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了
1995年 慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了
1998年 慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学
現在、慶應義塾大学産業研究所特別研究員